心に残った本(2019年)

 

中沢新一『レンマ学』(電子書籍
●『井筒俊彦英文著作翻訳コレクション 存在の概念と実在性』
永井均存在と時間──哲学探究1』
永井均『世界の独在論的存在構造──哲学探究2』

 

 人文系で記憶に残った書物。
 他に、井筒俊彦英文著作翻訳コレクション『言語と呪術』とW.ジェイムズ『宗教的経験の諸相』、入不二基義『あるようにあり、なるようになる──運命論の運命』と入不二基義森岡正博『運命論を哲学する』。

  

安藤礼二『迷宮と宇宙』

  

 安藤系譜学の傑作。
 ファシスト宮沢賢治アナキスト夢野久作、『春と修羅』と『ドグラ・マグラ』(さらにベルクソンの『創造的進化』が)交響する。生命の発生・進化と意識の発生・進化(と言語の発生・進化)が重ね合わされる。
 『光の曼陀羅 日本文学論』以来、久々に文芸批評を読む愉悦を味わった。

 (系譜学的思考、類化性能の極致。由来や脈絡を異にするものの同質性・同型性を見出し、それらを物象(物証)と心象(心証)によって系譜づける思考。たとえばポー・篤胤⇒足穂、折口信夫井筒俊彦中沢新一安藤礼二小林秀雄吉本隆明柄谷行人安藤礼二若松英輔、等々。)

  安藤本では他に『大拙』『吉本隆明──思想家にとって戦争とは何か』『列島祝祭論』を読んだ。いずれも濃い記憶が残った。

 「能は、中世の神仏習合期、真言宗が理論化した即身成仏思想および天台宗が理論化した天台本覚思想にもとづき、仏教的な思考方法、その無意識の論理(「アラヤ識」)を舞台として表現したものであった」(『列島祝祭論』251頁)

 

石田英敬東浩紀『新記号論──脳とメディアが出会うとき』

●大野ロベルト『紀貫之──文学と文化の底流を求めて』

 

  「哥とクオリア/ペルソナと哥」の参考書から二冊。(『新記号論』は『迷宮と宇宙』『存在と時間──哲学探究1』とあわせて今年の三冊。)
 鈴木宏子『「古今和歌集」の創造力』、井崎正敏『考えるための日本語入門──文法と思考の海へ』、中西進『ひらがなでよめばわかる日本語』も記憶に残った。
 柿木伸之『ベンヤミン言語哲学──翻訳としての言語、想起からの歴史』、酒井邦嘉チョムスキーと言語脳科学』も大いに参考になった。
 他に、辻邦生『情緒論の試み』とアントニオ・R・ダマシオ『感じる脳──情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』。

 

 ●加藤文元『宇宙と宇宙をつなぐ数学──IUT理論の衝撃』

 

 一気読み。ただし内容が消失するのも一気。

 

柄谷行人『世界史の実験』
大塚英志『感情天皇論』
吉見俊哉『平成時代』

 

 政治社会系では他に橘木俊詔『「地元チーム」がある幸福──スポーツと地方分権』と落合陽一『日本再興戦略』と山崎雅弘『歴史戦と思想戦──歴史問題の読み解き方』を読んだ。

 

パヴェーゼ『祭りの夜』
●マーク・グリーニー『暗殺者の追跡』
原尞『それまでの明日』

 

 六年前のトリノ旅行の後に買ったパヴェーゼを、今年のトリノ旅行から帰って読み終えた。他に、島崎藤村『夜明け前』第一部(青空文庫)を十五年越しに読み終えた。
 エンタメ系(海外)ではグレイマン・シリーズ最新作。『イスラム終戦争』も安定していた。
 リー・チャイルド『ミッドナイト・ライン』、ダン・ブラウン『オリジン』、ジェフリー ディーヴァー『ウォッチメイカー』も堪能できた。
 ブライアン・フリーマントルのチャーリー・マフィンシリーズ完結篇(『顔をなくした男』『魂をなくした男』)をほぼ十年ぶりに読んだ。
 トマス・ハリス『カリ・モーラ』はやや不発。
 新規開拓ではマイクル・コナリー『エコー・パーク』『贖罪の街』とスティーヴン・ハンター『狙撃手のゲーム』。
 年末年始をダヴィド・ラーゲルクランツ『ミレニアム6 死すべき女』で過ごす予定。
 国内では他に大沢在昌『暗約領域 新宿鮫11』と真山仁『トリガー』。どちらもやや不発。