心に残った本(2020年)
今年の収穫。
大江健三郎を「発見」したこと。『同時代ゲーム』を途中で放り投げて以来40年、食わず嫌い状態が続いていたのが、なぜか気になった800頁越えの岩波文庫版自選短篇集を約半年の逡巡を経て購入し、ひと月のあいだ読み耽った。高校生の頃の感覚が甦った。
長年探していた創元ライブラリ版中井英夫全集10『黒衣の短歌史』の古本を定価並みの価格で入手し、コロナ禍の在宅生活のなかで読書の愉悦を味わいながら読み終えたこと。
コロナ禍がもたらしてくれたことは他に、普段ならたぶん腰を据えて読むことができなかったと思う『武満徹・音楽創造への旅』(立花隆)や『かたちは思考する』(平倉圭)をノートを取りながら読了したこと。
前々からの懸案だったクロード・レヴィ=ストロースの『神話論理』全巻読破の糸口がつかめたこと(第Ⅰ巻で中断)。
『定本 日本近代文学の起源』(柄谷行人)の再読を経て、大江健三郎とは違う意味で敬遠していた中上健次の『枯木灘』を読んだこと。
コロナ禍とは関係なく、今年最大の収穫は入不二基義著『現実性の問題』と出会えたこと。
【哲学系】
●入不二基義『現実性の問題(The Problem of Actu-Re-ality)』
◎重久俊夫『西田哲学とその彼岸──時間論の二つの可能性』
◎近内悠太『世界は贈与でできている──資本主義の「すきま」を埋める倫理学』(電子書籍)
◎落合仁司『構造主義の数理──ソシュール、ラカン、ドゥルーズ』
【人文系】
●工藤進『声──記号にとり残されたもの』
●諏訪哲史『偏愛蔵書室』
◎細見和之『ベンヤミン「言語一般および人間の言語について」を読む──言葉と語りえぬもの』(再読)
◎柿木伸之『ベンヤミンの言語哲学──翻訳としての言語、想起からの歴史』
◎茂木健一郎『クオリアと人工意識』(電子書籍)
◎中山元『アンドロイドの誕生──ラカンで読みとく『未来のイヴ』』(電子書籍)
【政治系】
【数学・サイエンス系】
●森田真生『数学の贈り物』
◎西郷甲矢人・田口茂『〈現実〉とは何か──数学・哲学から始まる世界像の転換』
◎中沢新一・山極寿一『未来のルーシー──人間は動物にも植物にもなれる』
◎橋元淳一郎『空間は実在するか』
◎マーク・チャンギージー『ヒトの目、驚異の進化──視覚革命が文明を生んだ』(電子書籍)
◎スティーヴン・ミズン『歌うネアンデルタール──音楽と言語から見るヒトの進化』
【アート系】
◎立花隆『武満徹・音楽創造への旅』
◎平倉圭『かたちは思考する──芸術制作の分析』
◎末永幸歩『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』(電子書籍)
【文学系】
●『中井英夫全集[10] 黒衣の短歌史』
●柄谷行人『定本 日本近代文学の起源』(再読)
●『柄谷行人講演集成 1985-1988 言葉と悲劇』(再読)
●川端康成『雪国』(再読)
●髙樹のぶ子『小説伊勢物語 業平』(電子書籍)
●『大江健三郎自選短篇』
●大江健三郎『万延元年のフットボール』(電子書籍)
●中上健次『新装新版 枯木灘』(電子書籍)
◎村上春樹『一人称単数』(電子書籍)
◎多和田葉子『文字移植』
【エンタメ系】
◎恩田陸『祝祭と予感』(電子書籍)
◎相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(電子書籍)
◎カリン・スローター『破滅のループ』
◎リー・チャイルド『警鐘』(電子書籍)
◎マーク・グリーニー他『レッド・メタル作戦発動』(電子書籍)
◎マーク・グリーニー『暗殺者の悔恨』(電子書籍)