『おとこ友達との会話』その他

今週は夜の懇親会が三回も続きややグロッキー気味。
カバンの中に常備していたのは『半島を出よ』上巻と『批評理論入門』と檜垣立哉西田幾多郎の生命哲学──ベルクソンドゥルーズと響き合う思考』と白洲正子『おとこ友達との会話』の四冊。
西田幾多郎の生命哲学』はどこか中沢新一の『森のバロック』を思わせるとことがあった。
南方熊楠の凄さはポストモダン思想の先取りにあるということが延々と綴られていた(ように記憶している)。
それだと後付けの理屈、後知恵の批評にすぎないと思った。
でもそれはそれでとても刺激的で面白かった。
檜垣立哉さんの本にはそのような中沢流のあざとさ、というか戦略性のようなものがあまり感じられない。
『おとこ友達との会話』はとてもよかった。
対談でも討論でもなく会話、テーマや決まり事があるわけではない会話。
この本を読んで何かためになる知識や情報、気の利いた思想の手掛かりなどが得られるわけではない。
得られないわけでもないが、この本を読むことの意味はそういうところにあるのではない。
ここに収められているのは良質のワインの香りや最高級の料理の匂いの記憶のようなもので、その残り香をたよりに白洲正子と九人の「おとこ友達」との会話をいまここに立ち上げ、そこに流れていた贅沢で創造的な時間を反芻し追体験すること、そして読み終えて何も残らないことそのものを味わうのでなければこの本を読む意味はない。