2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ハードボイルドな心、高度産業社会を生きる技術

河野哲也著『〈心〉はからだの外にある』は、二つの太い線で構成されている。一つは「デカルト的コギト」以後の主観主義(純粋自我の概念)への批判であり、いま一つは政治的なものを心理学的なものに置き換える心理主義(反省的自己の概念)への批判である…

神話論理・哥の勉強・その他とりとめのないこと

前回とりとめなく書いたこと(鈴木一誌の文章の「メカニック」な感触のこと、『雪国』の島村が舞踊評論家だったこと)との関連で、いや関連しないけれど、もう少しとりとめのないことを書いておく。 ◎クロード・レヴィ=ストロース『神話論理Ⅱ 蜜から灰へ』…

信仰をもつ人間の枕頭の書、そして重力と舞踏

鈴木一誌は、『レヴィ=ストロース『神話論理』の森へ』に収められた「重力の行方──レヴィ=ストロースからの発想」を、こう書き始めている。「しごとを終えたあと、邦訳されたクロード・レヴィ=ストロースの著作を読むのが、二か月ほどのならいとなった。…

立川武蔵『仏とは何か』

立川武蔵著『仏とは何か』(講談社選書メチエ)を読んだ。 講義録「ブッディスト・セオロジー」の第三巻。第一巻「聖なるもの 俗なるもの」と第二巻「マンダラという世界」は、昨年三月、四月と続けて刊行された際に買い求め、全五巻が出揃ってからまとめて…

橋元淳一郎『時間はどこで生まれるのか』

ようやく一つ、「棚卸し」ができた。 読みかけのまま放置している本が一杯あって、気になってしようがない。『時間はどこで生まれるのか』の関連本では、去年の2月に同時に買って、いまだに読み切っていないのが三冊ある。内井惣七『空間の謎・時間の謎──宇…

ノヴァーリスの断章

古今東西、老若男女、聖俗貴賎を問わず、一番好きな作家は誰かと問われたら、たぶん迷わずノヴァーリスと答えるのではないかと思う。そんなことを訊ねる人はいないだろうし、それに、きっと時と場合で答えは違ってくるだろうけれど、今のところはノヴァーリ…

スコラスティック・レアリズム、トリニティ

「中世哲学復興」の特集を組んだ『大航海』から、坂部恵×樺山紘一の対談「中世哲学のポリフォニー」と神崎繁×三浦雅士のインタビュー「翻訳が創造したもの」、パースの「観察の新しいクラスについて」(三谷尚澄訳)と訳者解題「スコトゥス的実在論者として…

自己投入(合体)と自己分裂(分身)、体験された現象

『坂部恵集4』を買って、いつものようにあとがきと月報を読んだ。月報には池上嘉彦、吉増剛造、両氏の文章が掲載されていた。どちらも面白かった。(肝腎の本文の方は、第1巻の「生成するカント像」をはじめから順を追って読み始めたものの、これに専念し…

現に書いている時間にダイブすること、批評の瞬間

本の読み方にはいろいろある。決まった方法や作法というものはない。昔、ある人から、背表紙を凝視することも一つの読み方で、三木清がそういう趣旨のことを書いていると聞いたことがあるが、この記憶はあやしい。 本の読み方に各種の方法があるとすれば、感…

『ニッポンの小説』その他

久しぶりに予定のない時間がぽっかりできたので、たまたま手元にあった高橋源一郎著『ニッポンの小説 百年の孤独』をぱらぱらと眺め始めると、これがめっぽう面白く、きりのいいところで止めるつもりが止められず、とうとう最後まで一気読みをして、おかげで…