2005-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『中世芸能を読む』その他

坂部恵の日欧精神史的転換期の説と丸谷才一の早わかり日本文学史の組み合わせが頭の中でどんどん増殖していく。 ミシェル・ウエルベックが『素粒子』 で提唱し中沢新一が『カイエ・ソバージュ』シリーズでとりあげた三つの形而上革命(一神教革命、科学革命…

音楽について

一昨日『セロニアス・モンク』を観て、久しぶりに1枚だけ持っていたモンクのCDを聴いた。 モンクを聴くのが久しぶりだという以上に、そもそも音楽を(何か他のことをしながらではなく)聴くのが実に久しぶりだった。 音楽を聴くのは文字を読むのとは違う…

『物質と記憶』(第7回)

『物質と記憶』の独り読書会。 今日は第一章六節「イマージュと実在」と七節「イマージュと感情的感覚」を熟読し、八節「感情的感覚の本性」と九節「感情的感覚から切りはなされたイマージュ」と十節「イマージュ本来のひろがり」を通読した。 知覚と表象を…

最近借りた本・買った本

精神史的リソースとしての中世芸道論研究のための文献を探しに図書館をはしごした。 どれだけ読めるかはともかく、雰囲気をもりあげるための七冊を選んで持ち帰った。 ドナルド・キーン『日本文学の歴史5 古代・中世篇5』(連歌の章を含む)、草月文化フォ…

秋のお勤め

姫路の寺町にある妙国寺へ秋の彼岸のお勤めに出かけた。 そこで「立正安国 お題目結縁運動」のポスターを見つけた。 平成17年から34年までの17年間、日蓮宗が信徒に何か運動を提唱しているらしいのだが、中味はまったく分からない。 結縁(けちえん)は「場…

『レヴィ=ストロース講義』

『レヴィ=ストロース講義』読了。 レヴィ=ストロースの講演を京都で聴いたことがある。たしか日文研が主催した催しで、梅原猛の「日本人のあの世観」についての講演の後だったと記憶している。 内容はほとんど記憶になく、日本神話、それもスサノオの名が…

『モデルニテ・バロック』その他

坂部恵『モデルニテ・バロック』に「リベラル・アーツ的な伝統ということをいえば、この時期の歌論、連歌論、その他多くの芸道論の類には、日本におけるひろい意味での哲学的制作に今後活用されるはずの多くの精神史的リソースが眠っているだろう」とあった…

『モデルニテ・バロック』その他

『モデルニテ・バロック』を五十頁ほど読んだ。 ◎エスノサイエンス(土着の伝統科学)という言葉(147頁)。 ◎「あわい」は「語り・語らい」や「はかり・はからい」の造語法と同じく「あう」という動詞そのものを名詞化してできた言葉で、西田幾多郎の「場所…

『東京奇譚集』その他

植島啓司『性愛奥義──官能の『カーマ・スートラ』読解』を買った。 「われわれはなんと貧困な性愛しか知らなかったか!」「誘惑の作法から爪と歯の使い方まで いまこそ学ぶ、古代の智慧」「卓抜な比喩と精緻な分類から豊饒なカーマの世界が浮かび上がる!」 …

『物質と記憶』(第6回)

「内田樹の研究室」(2004年07月18日)が『物質と記憶』を取り上げている。 「若い頃に読んだときはぜんぜん面白くなかったベルクソンであるけれど、五十路を過ぎて読むとなかなか面白い」。同感。 先週に続き五節「表象と行動の関係」を熟読。 今日は第一章…

『モデルニテ・バロック』その他

この5月、同時期に買って共に読みかけのままになっていた二冊の論文集、坂部恵『モデルニテ・バロック』と木村敏『関係としての自己』を少しずつ読んだ。 『関係としての自己』は「序論」を読んだ。これでたぶん五度目。 読み返すたびに新たな発見がある。 …

『出生の秘密』その他

昨夜、講演後のミニパーティと少人数の二次会で、複数のジャーナリストから新聞やテレビでは報道できない話をたくさんお聞きしたのだが、にわかには思い出せない。 こういう情報は知らず知らずのうちに身に染みこんでいくもので、いつか意味とかたちを変えて…

岸井成格さんの講演

東京であったセミナーに参加して、毎日新聞社特別編集員の岸井成格さんの講演を聴いた。演題は「政局大激動」。 あまりにもタイミングのいい企画で、いつになくギャラリーは多い。 地殻変動とも形容すべき自民党の圧勝をもたらした「小泉旋風」とは何だった…

『ハルビン・カフェ』

打海文三『ハルビン・カフェ』読了。 8月の頭に読み始めて以来ほぼ毎日、仕事帰りの電車の中で沈潜した。 最後まで飽きることなく、それどころかしだいに熱が入り、この重厚に構築され、錯綜した人間関係と欲望の質がはりめぐらされた虚構世界に全身を浸す…

『シネマと書店とスタジアム』

沢木耕太郎『シネマと書店とスタジアム』読了(書評とシネマ評で一部読み残したものがあるが、それは今後のお楽しみ)。 やはりこの人のスポーツ観戦記には得心がいかない。 「人間の物語」へのやや過剰気味の傾斜が散見される。 石川忠司との対談(『群像』…

最近読んだ本

途中まで読んで放置したままの本がたまっている。 気になってしかたがない。いつかまとめて「棚卸し」をしなければと気持ちが焦る。 最後まで読むことへのこだわりがなかなか抜けない。 「僕は、小説は部分だけ読んでいて構わないと思っているのね」(保坂和…

『物質と記憶』(第5回)

日曜の午前が待ち遠しくなってきた。 先週『物質と記憶』を読み始めて最初の陶酔(フィロソフィカル・ハイ)を経験して以来、続きを読むのが待ち遠しい。 第一章五節「表象と行動の関係」を熟読して、続く二節分を通読。 四節「イマージュの選択」も少し読み…

『「脳」整理法』

茂木健一郎『「脳」整理法』読了。 読み進めながら、本書の姉妹篇ともいえる『脳と創造性』に覚えたかすかな異和感がしだいに増殖していくのを感じた。 茂木さんがこの本を書いた動機は分かるような気がする。 そのことはタイトルに表現されている。 脳を使…

大見忠弘教授の講演・保坂和志と石川忠司の対談

東北大学の大見忠弘教授の講演を聴いた。 以前東京であった講演の記録を読んでいたので格別新しい情報はなかったけれど、肉声と肉顔に接しながら聴くとさすがに迫力がある。 基礎研究から実用化までのプロセスをリニアにではなく産学官連携の「ターゲット・…

『『パンセ』数学的思考』

吉永良正『『パンセ』数学的思考』読了。 モンテーニュの『エセー』と『パンセ』と『徒然草』は枕頭の書、無人島へのスプートニク(旅の道連れ)その他言い方はなんであれ、愛読書というよりはもう少し切実に身体の内側に寄り添ったかたちで読みつづけていき…

文覚

『素数の音楽』の冒頭に数学者アラン・コンヌと神経生理学者ジャン=ピエール・シャンジューのやりとり(『考える物質』)が紹介されている。 コンヌが「数学的実在は、人間の精神とは独立に存在する」といい、その数学世界の中心には不変の素数列があると言…

『物質と記憶』(第4回)

『物質と記憶』の(独り)読書会7週目。 先週に続き第一章四節「イマージュの選択」を精読した。 最初の陶酔を覚えた。この節はここだけ読んでも独立した哲学作品になっている。 冒頭の「神経系は表象をつくり出さない」(衝撃的な仮説!)から末尾の「対象…

『他者の声 実在の声』と『小説の自由』

野矢茂樹『他者の声 実在の声』読了。 読み残していた数篇の文章を読み飛ばした。 哲学系の本でこういう読み方はよくないのかもしれないけれど、よく分からないところや細部の論証にあまり逐一こだわらず、一気に通読してこそ伝わる哲学的問題の感触というも…

数学と小説

瀬名秀明『デカルトの密室』を買った。 『パラサイト・イヴ』から10年。あの瀬名秀明が、新たなる「脳と心」の謎に挑む! 三日前このキャッチ・コピーを書店で目にした翌日、飲み会の会場に一番乗りしたけれどまだだれも来ていなくて時間つぶしに店の近くの…