2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『芸術新潮』

久しぶりに『芸術新潮』を買った。 2月号の特集は「古今和歌集1100年 ひらがなの謎を解く」で、石川九楊の解説。 これと似た趣向の特集では、「橋本治がとことん語るニッポンの縄文派と弥生派」(2003年10月号)、「磯崎新 日本建築史を読みかえる6章…

『はじめたばかりの浄土真宗』

昨年どういうわけか読み損ねた本のなかで、『インターネット持仏堂』は最上級で気になっていたものだ。 昨日、近所の図書館で二冊そろったのを見つけ、後ろめたい思いを殺して借りてきた。 なぜ後ろめたかったかというと、内田樹が『いきなりはじめる浄土真…

『いきなりはじめる浄土真宗』

『物質と記憶』の独り読書会は今日はお休み。 このところにわかに私生活が多忙をきわめるようになり、ろくすっぽ活字を読む時間がとれない。 久しぶりの休日も、お持ち帰りの仕事が気になって、思うように時間を使えない。 あと一月ほど、この状態が続く。 …

『日本仏教史』

仏教熱が高じてめらめらと白い火が熾っている。 仏教そのものというより、日本仏教思想史への強烈な関心が沸騰しはじめた。 歌論書はどうなる。心敬はどうする。 内なる声が警告を発するが、この際無視する。 『名僧列伝』では欲求不満が残ったので、運命の…

『名僧列伝(一)』

紀野一義著『名僧列伝(一) 明恵・道元・夢想・一休・沢庵』読了。 この本はひどい。 明恵や夢庭や一休のどこがいったい「名僧」なのか、いくら読んでもまるで理解できないのだ。 第一、著者はたとえば夢窓や一休を嫌っている。 夢窓についてはこう書いてある…

最近読んだ雑誌(続)

◎『中央公論』2006年2月号 日本文化再発見シンポジウム「伝統と美意識は永遠なり」を読む。 語り手は辻井喬、小倉和夫、千宗屋、ドナルド・キーンの各氏。 活字で読むと気が抜けたビールみたいな議論だが、会場で生身で聞くとそれなりにコクとキレがあるの…

最近読んだ雑誌

◎『クロワッサン』2006年1月10日号 年末年始の休みに読んだ。 特集が「女の住まい方、男の住まい方」。 最近、といっても数年前からのことだが、「老後の住まい」ということをけっこう真剣に考えるようになった。 きっかけは「書庫」にしまい込んだ書物たち…

環境金融

藤井良広著『金融で解く地球環境』(岩波書店)を読んでいる。 ときおりこういう種類の本が無性に読みたくなる。 こういう種類の本とは、時事、政治、経済、公共政策にかかわり、次の時代のエッジをうかがい知ることができるもの。 できればあまり厳密に学術…

『全体性と無限(下)』解説

レヴィナスの『全体性と無限(下)』(熊野純彦訳,岩波文庫)を買った。 第一刷発行の日付けは1月17日で、奇しくも阪神・淡路大震災11周年の日。 先月、上巻の序文を読んだ日に「問題は、いつ読むかだ」と書いた。 この問題は解消していない。 つまりい…

『物質と記憶』(第21回)

『物質と記憶』第四章を読み終えた。 先週の日曜日に前半、「二元論の問題」「従うべき方法」の二節と「知覚と物質」の途中まで読み、その続きと「持続と緊張」「延長とひろがり」「心と身体」の三節を今日一気に読んだ。 二度目の陶酔(フィロソフィカル・…

休日の過ごし方──脳科学の勉強・その他

朝10時頃に起きて、いつものように(昔ほんのわずかな期間モダンバレエの教室に通っていた時に教えてもらった)真向法とストレッチを組み合わせた体操を数分間やって、これもいつものようにざっと新聞の見出しを眺めながらパンとココアを流し込み、駅前の…

『無思想の発見』

そうこうしているうちに、養老孟司著『無思想の発見』を読み終えた。 実はとっくに読み終えていた。 書店をのぞくと、新潮新書から『バカの壁』『死の壁』に続く第三弾『超バカの壁』が平積みになっている。 この「壁三部作」(なのかどうか知らない)はなぜ…

感情と言語

先週の土曜(14日)、「感情の論理」の項の最後次のように書いた。 養老孟司のいう「通常の論理回路を経ないで相手に伝わる」共感としての「感情」が「言葉」にかかわってくる。 そろそろこの話題に決着をつけておこう。 感覚世界と概念世界、情動(身体的・…

言葉とクオリア

言葉は「同じであって、違うものだ」から感覚世界(差異性)と概念世界(同一性)を結びつけることができるという、養老孟司(『無思想の発見』)の指摘は実に刺激的である。 これを読んで三つのことを連想した。 その1. ダマシオの『感じる脳』で、情動(…

余談二つ

なかなか本題にたどりつかない。 そのうちなにが本題だったかわからなくなる。どうでもよくなっていく。 一昨日、言葉が生まれる場所とその働きをめぐる養老説を引用した。 いわく、感覚世界と概念世界の重なりが言葉である。 言葉は「同じであって、違うも…

階層構造と入れ子

年の初めから読んでいる三冊の本(『無思想の発見』『象られた力』『感じる脳』)には共通項があって、それは「感情」である。 そして「感情」は「言葉」にかかわってくる。 この一昨日以来の話題からどんどん離れていくが、気にせず先へ進むことにする。 ※ …

養老孟司のロジック(再び)

昨日の話題の続き。 「同じ」と「違う」の一つのヴァージョンに「概念世界」と「感覚世界」がある。 『無思想の発見』での養老孟司の定義によると、「五感で捉えられる世界をここでは感覚世界と呼び、それによって脳内に生じる世界を概念世界と呼ぶ」(120頁…

感情の論理

年の初めから読んでいる本、『無思想の発見』(養老孟司)と『象られた力』(飛浩隆)と『感じる脳』(ダマシオ)。 これら三冊の本には共通項がある。 これはいま思いついたことだ。 それは偶然ともいえるし、牽強付会のこじつけとも思えるが、共通項とは「…

年の初めから読んでいる本──『感じる脳』

心脳問題や脳科学関係の本の在庫がたまっている。 「書庫」送りにできず、もう何年も本箱の棚で順番待ちのまま「熟成」している。 いま目につくものをざっと書き出してみると、ペンローズ『心の影──意識をめぐる未知の科学を探る』をはじめ、チャーマーズ『…

年の初めから読んでいる本──『象られた力』

昨年の暮れ、読み終えた本、読みかけの本、雑誌などを段ボール箱三つに詰め込んで「書庫」に送った。 (「書庫」というのは、高校の頃まで暮らしていた部屋のことで、いまは乱雑にたくさんの書物が埃を被って棲息している。 梱包されたまま数年放置されたま…

今年最初に読んだ本──『生物から見た世界』

その2.ユクスキュル/クリサート『生物から見た世界──見えない世界の絵本』(日高敏隆他訳,岩波文庫)。 生物は機械ではない。主体である。 生きた主体なしには空間も時間もありえない。 たとえばダニにとっての瞬間(最短の時間の断片)は十八年であり、…

今年最初に読んだ本──『解剖学教室へようこそ』

年末から年始にかけていくつかの雑誌、本を手にしたが、最後まで読み終えたのは二冊だけ。 その1.養老孟司『解剖学教室へようこそ』(ちくま文庫)。 養老人間科学の原点。自然(人体)と学問(科学的思考)と歴史(解剖史)をめぐって、平易簡明な物言い…

養老孟司のロジック

正月明けに関連本を読んで以来、すっかり養老節にはまってしまった。 最新刊の『無思想の発見』(ちくま新書)はまだ冒頭の二章を読んだだけだが、茂木健一郎さんいうところの「独特の、ひんやりと肝に響くロジックの痛快さ」(『脳の中の人生』)が存分に発…

『物質と記憶』(第20回)

今年最初の『物質と記憶』独り読書会。 先週休んだのと(あまり関係はないが)年があらたまったのとで、ウォーミングアップがてら昨年暮れに読んだ第四章冒頭を「逐行的に」読み返した。 読み込めば読み込むほど、ベルクソンの議論の面白さと周到さがじわっ…

書き初め──名僧とヒッチコック

正月休みがあけて、まったくストレスの無い状態で三日ほどたらたらと仕事をして、今日からまた三連休。 このブログもしばらく「溜め記事」でうめて、今日が今年の書き初め。 年末年始に読んだ本や雑誌、買った本や雑誌のこと、この間考えたこと・やったこと…

 2005年に読んだ本(その6)

◎漆原友紀『蟲師』1〜6(講談社:2000.11〜2005.6) 生死、雌雄分岐以前の生命の根源的な記憶と彼此両界にわたるコミュニケーション・ルートにアクセスしつつ、あまつさえエンターテインメントしての結構を備えた稀にみる傑作。 ◎二ノ宮知子『のだめカンタ…

 2005年に読んだ本(その5)

◎丸谷才一『輝く日の宮』(講談社:2003.6) 一年半遅れで読んだ。このタイム・ラグがちょうど頃合いの熟成期間となった。熟したのはもちろんこの作品に対する読み手(私)の思いの方なのだが、作品そのものも一晩寝かした饂飩かなにかのように微妙だがくっ…

 2005年に読んだ本(その4)

◎松岡心平『宴の身体──バサラから世阿弥へ』(岩波現代文庫:2004.9) ◎松岡心平『中世芸能を読む』(岩波セミナーブックス:2002.2) 連歌は「言葉のまわし飲み」であり、連歌が張行される場は「文芸における「一揆」的場」であった(『宴の身体』)。ここ…

 2005年に読んだ本(その3)

◎養老孟司・玄侑宗久『脳と魂』(筑摩書房:2005.1) この二人は呼吸が合いすぎている。養老さんがしだいにべらんめえ調(ビートたけし風?)になっていくのがおかしい。細胞=システム=空(=器)、遺伝子=情報=色(=道)。人間は空であり、言葉は色で…

 2005年に読んだ本(その2)

◎内田樹『先生はえらい』(ちくまプリマー新書:2005.1) こんなに難解でひねくれて謎に満ちた書物を「若い人」に読ませるのはとんでもない。もったいない。秘伝書の中身をこれほどあけすけに語ってしまっていいのか。いいんです、そこに慈愛があれば。内田…