最近読んだ雑誌

◎『クロワッサン』2006年1月10日号
年末年始の休みに読んだ。
特集が「女の住まい方、男の住まい方」。
最近、といっても数年前からのことだが、「老後の住まい」ということをけっこう真剣に考えるようになった。
きっかけは「書庫」にしまい込んだ書物たち(私の無意識)をきちんと整理整頓して、老後の仕事部屋に収蔵したいと思ったこと。
でも、藤原和博さんによると、「本棚に囲まれた書斎」という「憧れの風景」のイメージは「吹き抜けが欲しい」とか「リビングにはゆったりとしたソファ」などと同様、映画やテレビや雑誌の世界からやってきた夢の「イコン」でしかない。
「「書斎」を作れば“できるビジネスマン”になったり“充実した老後”を送れると考えることも、このような勘違いの延長だ」(ちくま文庫『人生の教科書[家づくり]』39頁)。
これは賢者の言葉だ。
「女の住まい方、男の住まい方」の記事にもそのような記号、「自分らしさ」といった実体のない夢をめぐるシンボルやイコンやインデックスがふんだんにしつらえられていたが、これはこれでよくできていた。
それより、第2特集「小説家の小説案内」が面白かった。
なかでも恩田陸さんの『春の雪』(三島由紀夫)をめぐる文章「ケレンと様式美、スター三島に酔いしれたい。」が出色。


◎『季刊チルチンびと』35号(2006 WINTER)[特集|新しい住まいの「和」]
◎『男の隠れ家』2006年2月号[特集|愉悦の読書空間 156人の384冊]
この二冊も年末年始の休みに読んだ。
いや眺めた。
いずれも「幸福のイコン」に満ちた雑誌で、眺めているだけで愉しめる。
和風の住居の写真もいいけれど、たくさんの書物の写真にそそられる。
子どもの頃の切手蒐集を思い出す。
倒錯している。
どこか淫している。
いっそ(お菓子の家ならぬ)本で造った家に住むか。


◎『BRUTUS』No.586(2006.2.1)[特集|Garden Love]
◎『GRAPHICATION』142号(2006.1)[特集|子どもたちは、いま…]
結局、グラフィック雑誌は読まずにインテリアのように飾っておく。
壁に掛けた絵画のように、時折ぱらぱらと表層を眺めて時間を潰す。
雑誌の活字を読むという体験は、一般の書籍を読むときのそれとまるで異なっている。
言葉が記号になって、自在に結びついていく。
対談であっても、一般の書籍からの引用であっても、それは変わらない。
切り取られた言葉が写真のキャプションのように、まったく違う相貌を見せている。
雑誌を眺める時間というのは、何かとつながっている感覚とそこには何もないという空虚感がないまぜになっている。
欲望が編集されていく。
本を読む、マンガを読む、写真を見る、映画を観る、音楽を聴く、絵画を鑑賞する、スポーツを観戦する、雑誌を眺める。
それぞれまったく異なる体験である。