2016-01-01から1年間の記事一覧

心に残った本(2016年)

年々、読了本が加速度をつけて減り、再読本が微かながら増えている。フィクション系と数学自然科学系が激減し、政経倫社系と歴史系が増加傾向にある。 通販での中古本、電子書籍の購入が増え、遠隔複写サービスの利用が新登場、同時拡散的、部分熟読型の読書…

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語り口の問題─永井均が語ったこと(番外)

これは『西田幾多郎』を読んでいた時に気がついたことだが、永井均さんは本文と註に書いたことを自在に繋いで議論している。その分かりやすい実例が『改訂版 なぜ意識は実在しないのか』にあった。 《で、こういう類比はどうでしょう? 心や意識のあり方を、…

知的な問題と修行の問題─永井均が語ったこと(その21)

続けて、死なない〈私〉をめぐる永井均さんの発言を引く。 《それで、この話は、アキレスと亀の話と同じだと思います。(略) これは、論理的にはそうなるけど、実際には追いついて追い抜くじゃないか、というふうにみんなが思うわけですけど、実はそうじゃ…

死ねない〈私〉─永井均が語ったこと(その20)

続けて永井均さんの発言を引く。 《この本来的でない根源性、つまり無我的=独我的な観点から見ると、私は死なない、というか死ねない、ということが言えるのではないか、ということをここからはベッカーでもなく、ハイデガーでもなく、私の話として言ってみ…

非本来的根源性─永井均が語ったこと(その19)

前回の続き。オスカー・ベッカーのハイデガー批判について、永井均さんが『〈仏教3.0〉を哲学する』の中で語ったこと。 《時間に関して言うと、日常的、世間的な、いわゆる頽落的な時間状態でもなければ、歴史的な一回性、つまり目覚めた本来的なあり方で…

オスカー・ベッカーのこと─永井均が語ったこと(その18)

「横並びの関係の中で、つまりいっぱい主体が存在する中で、ひとつだけ他と全然違うやつがいる、内容がその本質ではなく、単なる存在がその本質であるやつがいる。それはいったい何なのか」(208頁)。 この話(問題)は主客図式中心の西洋哲学の歴史におい…

チェスの比喩と映画の比喩、承前─永井均が語ったこと(その17)

『〈仏教3.0〉を哲学する』第三章後半。 永井均さんはそこで、ハイデガーの用語を使って、〈私〉(藤田一照さんが言うところの「山括弧の純粋形の」(217頁)私)の死=Tod=死、「私」(同じく「カギ括弧の平均形の」私)の死=Ableben=落命の違いについ…

チェスの比喩と映画の比喩─永井均が語ったこと(その16)

永井哲学に「ひたりつく」のはまた別の機会にして、ここではあくまで永井哲学を「使う」立場に徹する。 で、四番目の話題。四番目といっても、それは独立したものというよりは最初の話題「空っぽの〈私〉と歌の器」の補遺のようなものになると思う。 『〈仏…

四つの私的言語、補遺─永井均が語ったこと(その15)

書き残したことをいくつか。 その1. 「風間くんの「質問=批判」と『私・今・そして神』」で言及された次の文章に、「西洋哲学史全体」にかかわる四つの問題が出てくる。 《ともあれ、神の存在論的証明をめぐる哲学史上の所説、現実世界の位置をめぐる可能…

私・今・神・そして愛─永井均が語ったこと(その14)

いま『改訂版 なぜ意識は実在しないのか』を毎日少量ずつ服薬するように読んでいて(服読?)、今朝読んだところにこんなくだりがあった。以下、前後の文脈は気にせずに引用。 《しかし、これは「実際に痛みを体験する/しない」ということを実体化し、対象…

四つの私的言語、承前─永井均が語ったこと(その13)

「私」「いま」「ここ」をパースペクティヴの三つのエレメントになぞらえるとすれば、「感情」もしくは「相貌」はパースペクティヴの第四のエレメントになる。 (「感情」もしくは「相貌」に代わる表現、「私」「今」「ここ」に匹敵する簡便な言い方が思いつ…

四つの私的言語─永井均が語ったこと(その12)

私はかねてから「四つの私的言語」という仮説をたてている。 この連載の3回目に紹介した「哥とクオリア/ペルソナと哥」の重要テーマで、これから本格的に取り組むことになると思う。 その仮説の起点は永井均さんの私的言語論にある。だから前回、前々回に…

人称と時制と様相、承前─永井均が語ったこと(その11)

第三章での永井均さんの関連する発言も引く。 「人称と時制の方が様相よりも一段と根源的じゃないですか」という藤田一照さんの問いに答えて。 《そうです。様相は後から作ったから、あまりない言語もありますし。しかし、人称と時制は必ずあって、日本語だ…

人称と時制と様相─永井均が語ったこと(その10)

「累進構造」にはこれ以上立ち入らない。(『〈仏教3.0〉を哲学する』に登場しないから。) が、パースペクティヴの方は、これから始める第三の話題に関係してくると思う。 『〈仏教3.0〉を哲学する』第二章の最後で、永井均さんはこんなことを語ってい…

パースペクティヴと累進構造─永井均が語ったこと(その9)

永井=内山の「世界四段階説」の概要を読みながら、というより『〈仏教3.0〉を哲学する』に引用されたいくつかの図を眺めながら、この図はいったい誰が、どの視点から世界を観察して描いたものなのかが気になっていた。 これは、独在者の複数性や世界の複…

世界四段階説、承前─永井均が語ったこと(その8)

永井均さんが述べていること(精確には、永井均さんが要約している内山老師の議論)を整理する。 ◎第一段階、全然切れている世界。リアルな断絶の世界。「私秘性」の世界。言語以前の世界。 ◎第二段階、コトバやお金で繋がっている世界。「よしあし、好き嫌…

世界四段階説─永井均が語ったこと(その7)

話がすっかり『〈仏教3.0〉を哲学する』から離れていった。「空っぽの〈私〉と歌の器」に続く第二の話題に移る。 まず、第二章での永井均さんの発言を、前後の文脈抜きにまるごと引く。 《つまり、三段階あるということなんですよ。まず、全然切れている世…

台本・演出家・そして演じつつある私─永井均が語ったこと(その6)

短歌(和歌)と永井哲学の関係をめぐって、以前から気になっていたことの一端を(いわば備忘録として、その素材だけ)書いておく。 その1. 永井均さんは『なぜ意識は実在しないのか』の「はじめに」で、哲学書は「台本」で、哲学者=永井は下手くそで拙い…

『誰にもわからない短歌入門』─永井均が語ったこと(その5)

その2. 永井均さんのツイッターの記事(2016年9月18日、9月19日)。 ………………………… ゼミ合宿中に学生の一人に『誰にも分からない短歌入門』をもらったので(といってもお金を払ったから買ったともいえるが)読んでいる。「誰にも分からない」という触れ込みに…

永井均の「鳴き声」─永井均が語ったこと(その4)

短歌(和歌)と永井均の哲学をめぐって。 その1. 『哲学の賑やかな呟き』に「吉本隆明について 2011.4.27」という文章が収録されている。 永井均さんはそこで、『言語にとって美とはなにか』や『最後の親鸞』や『源実朝』の読書歴を披露し、「私は文芸理論…

空っぽの器─永井均が語ったこと(その3)

永井均の第一アリアを聴きながら、私はたまたま同時並行的に読み進めていた書物のことを思った。 その書物とは安藤礼二編『折口信夫文芸論集』。そこに収められた「俳句と近代詩」のなかで折口信夫は、短歌(和歌)は「無内容」だと語っている。 《たとえば…

空っぽのアリア─永井均が語ったこと(その2)

鼎談で、永井均さんは何度か、請われて「永井哲学」のエッセンスを語る。歌うように語る。 その最初の「アリア」で、無心というときの「心」(=実存)とマインドフルネスの「マインド」(=本質)の違いを語っている(第一章、32-40頁)。 無心、無我という…

『〈仏教3.0〉を哲学する』で永井均が語ったこと(その1)

期せずして本書は「永井哲学」の入門書としても役立つものになっている。永井均さんは『〈仏教3.0〉を哲学する』の「鼎談の後に(二)」でそう書いている。 永井均が「永井哲学」を自称するのは、かなり珍しいことなのではないかと思う。 『〈私〉のメタフ…

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