2005-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『うつし 臨床の詩学』と坂部恵

森岡正芳『うつし 臨床の詩学』を買った。 昨日の朝日の書評欄(評者:鷲田清一)で紹介されていた。 何が書かれていたかはまるで思い出せないが、その中に坂部恵『仮面の解釈学』の名が出てきたことだけは鮮明に憶えている。 先月の初め近所の本屋で見かけ…

『物質と記憶』(第11回)

『物質と記憶』。 先週休みをとった分も含め一気に第二章を読み終えてしまおうと意気込んでいたけれど、このところ体力と集中力を切らしていて途中で息切れ。 いろいろとたくさん書いておきたいことはあるのだが、前回分とあわせてひとまとめに来週以降の作…

『生命記号論』への再挑戦

何度も何度も読みかけては、そのつど何らかの事情によって中断し、結局最後まで読み終えることができない書物がある。 その事情がそれぞれのケースで異なるのは当然だが、そこに一定の傾向というものはある。 なかでも、それ以上読み進めるとただただそこに…

『正義論/自由論』

土屋恵一郎『正義論/自由論──寛容の時代へ』購入。 第Ⅰ部「リベラリズムの政治哲学」の第1章「ユートピア論的な開始」に、松岡心平著『宴の身体』(第三章「宴の身体」)と大岡信『うたげと孤心』に準拠した議論が展開されている。 連歌会や一揆やカフェに…

『心と脳の正体に迫る』

『物質と記憶』の独り読書会は休業。 天外伺朗・瀬名秀明『心と脳の正体に迫る──成長・進化する意識、遍在する知性』を読了。 実に面白い。無尽蔵に面白い。以下、いくつか話題を拾っておく。 第3章「植物の意識を探る」での三輪敬之氏の発言は示唆と刺激に…

『中世の文學』その他

神戸中央図書館で唐木順三『中世の文學』(筑摩叢書)を見つけた。 「中世文學の展開」のすき(美的感性的段階)・すさび(形而上的段階)・さび(宗教的段階?)の弁証法的構造の説は面白い。 あわせて塚本邦雄『新古今集新論──二十一世紀に生きる詩歌』と…

『柳田國男文芸論集』

茂木健一郎さんのブログで講談社文芸文庫版『小林秀雄対話集』がとりあげられていたのに刺激されて、いずれ入手することになろうと思っていた同本を買い求めるべく決意をかためて書店に出向き(といっても毎日立ち寄っているのだが)、でも心変わりして同じ…

『デカルトの密室』

瀬名秀明『デカルトの密室』読了。 『BRAIN VALLEY』との比較でいうと、小説あるいは物語としては心底愉しめなかった。 作者が考え抜いて仕掛けた(であろう)謎やパズルも、自力で解いてみたいという意欲がかきたてられない。 他者の心が理解できない天才科…

『新々百人一首(上)』

半日仕事を休み、小西甚一『中世の文芸』(講談社学術文庫、もしくは現代新書の『「道」──中世の理念』)と唐木順三『中世の文学』と岩波文庫の『中世歌論集』と勝俣鎮夫『一揆』(岩波新書)を探して古本屋めぐり。 三宮サンパルの2階で風巻景次郎『中世の…

『アースダイバー』

中沢新一『アースダイバー』読了。ほぼ五ヶ月、手塩にかけて断続的に読み継いだ。 以前、仕事で東京へ出かけた際、空き時間をつかった散策のガイドブックとして携帯したことがある。 その時は、渋谷・明治神宮から東京タワーまで、全体のほぼ半分ほどの文章…

『孔子暗黒伝』『恋と女の日本文学』

一昨日の晩に『陰陽師』を読み終えて、箸休めではないが『孔子暗黒伝』を少し読み進め、結局、昨日の昼下がり、『music for 陰陽師』(ブライアン・イーノではなくて伶楽舎の雅楽の方)を聴きながら一気に読み終えた。 読後、眼精疲労と軽い頭痛に襲…

『物質と記憶』(第10回)

『物質と記憶』。 先週読み飛ばした箇所を熟読したうえでこれまでの議論を反芻しておく予定だったが、気持ちが先へ先へと急くので過去をふりかえらず第二章一節「記憶力の二形式」を読んだ。 (第一章にはいくつか熟考すべき論点や疑問点が残っている。最後…

『風の旅人』『陰陽師13太陽』

ユーラシア旅行社というところから出ている『風の旅人』15号(2005年8月1日)を買った。 前々から気になっていた雑誌。なによりも写真が素晴らしい。執筆陣もけっこういい。 近所の本屋に一冊だけ置いてあるのをみつけて買ったのだが、これは1号前の分で…

『完本 風狂始末』ほか

大阪での仕事を終え阪急東梅田商店街で一杯やって、紀伊國屋書店梅田本店で小西甚一『中世の文芸』と唐木順三『中世の文学』と岩波文庫の歌論集か歌合集を探したけれどどれも置いてなくて「これでも天下の紀伊國屋か!」と酔った勢いで毒づきながら、それで…

「千夜千冊」で「心敬」を検索した

高橋睦郎『読みなおし日本文学史』について、松岡正剛さんは「千夜千冊」第三百四十四夜に書いている。 「日本の文学史はそもそも「歌」を内包した歴史であった…。ここで歌といっているのは和歌から歌物語や能楽をへて俳諧におよんだ文学をさしている。」 「…

『多神教と一神教』『読みなおし日本文学史』

このところ単行本では『西行の風景』と『デカルトの密室』、文庫では『「歌枕」謎ときの旅』と『日本藝能史』と『日本人の身体観』、新書では『読みなおし日本文学史』と『多神教と一神教』を日々取り替えながら読んでいる。 その『多神教と一神教』に、前二…

物の学習と記号の学習

少し考えてみたいことがあるので書いておく。 前田英樹さんの『倫理という力』に、物の学習と記号の学習という対になる言葉が出てきた。 以下は私の勝手な議論なので、前田英樹さんの議論とはほとんど関係ないが、この「物」と「記号」を養老孟司さんがいう…

『物質と記憶』(第9回)

『物質と記憶』。純粋知覚の理論の要約(71-75頁)を再読し、十一節「純粋知覚」から十四節「物質と記憶力」までを通読。 これで第一章を終えたことになる。 「純粋記憶を脳の作用からひき出そうとするあらゆる試みは、分析すれば根本的な錯覚を露呈せざるを…

『バルバラ異界』

東京で見損ねた『ベルリンの至宝展』を神戸市立博物館に見に行く。 明日が最終日。それなりに人が多くて、じっくり時間をかける余裕がなかった。 「祭壇の浮彫:太陽神アテンとアクエンアテン王の家族 前1345年頃」「アプリア製渦巻型クラテル:巨人族との戦…

『イノセンス』その他

押井守の『イノセンス』と浦山桐郎の『キューポラのある街』を観た。 『イノセンス』の映像にはしばしば息をのんだが、つづけて観た昭和37年封切の『キューポラのある街』の白黒の画像の前にすっかりかすんでしまった。 くらべる方がおかしい。 草凪優『桃色…

歌の心・富哲世さんの詩

瀬名秀明『デカルトの密室』で、「中国語の部屋」に幽閉された尾形祐輔が「これは機械の振りをするのではない、人間の振りをするのでもない。本当にぼくが人間であることを明示する戦いだ」「ぼくは文字情報だけで生身の人間であることを証明しなければなら…

ケルト熱・連・その他

毎月6日の人社講の第二回目。 神が宿るのではない、存在が神なのだ。宗匠の弁天さんの命題。この言葉を知ったことが第一の成果。 第二の成果はケルト熱が再発したこと。 坂部恵さんの「日本哲学の可能性」(『モデルニテ・バロック』)によると、西欧日本を…

実証思考としての歌学

松岡心平『中世芸能を読む』読了。 以前熟読した三章「連歌的想像力」はとばして、一章「勧進による展開」と二章「天皇制と芸能」と四章「禅の契機─バサラと侘び」を玩味した。 天皇制と禅をめぐる部分はやや物足りない。というか、打てば響く実質が読み手の…

『モデルニテ・バロック』

坂部恵『モデルニテ・バロック──現代精神史序説』読了。 「バロックとは…モデルニテと通底してひとつの時代のおわりに立ち会いつつある者の生と思考のスタイルにほかならず、一方でビザンチンや中世の水脈につながりそれらの見直しと再評価をうながすものと…

『倫理という力』

前田英樹『倫理という力』読了。 プラトンは『パイドロス』で正確に考える人(知恵を愛する人)を「巧みな料理人」に譬えた(82頁)。 ベルクソンはこの比喩を愛好した。著者もこれを愛好する。 だから倫理を語る本書にトンカツ屋のおやじが登場した。 「ト…

『物質と記憶』(第8回)

『物質と記憶』。第一章八節「感情的感覚の本性」から十節「イマージュ本来のひろがり」を熟読。十一節「純粋知覚」を素読。 71頁から75頁にかけての「純粋知覚の理論」の手短かで図式的な要約はとても便利。 第一章の議論はほぼこれで尽きている。以下は第…

『バルバラ異界』その他

講談社学術文庫の二冊、小西甚一『中世の文芸──「道」という理念』(もともと『「道」──中世の理念』の書名で現代新書から刊行されていたもの)と折口信夫『日本藝能史六講』を至急手元におきたくなって書店をはしごしたがみつからず、ふと目についた高橋睦…