『心と脳の正体に迫る』

物質と記憶』の独り読書会は休業。
天外伺朗瀬名秀明『心と脳の正体に迫る──成長・進化する意識、遍在する知性』を読了。
実に面白い。無尽蔵に面白い。以下、いくつか話題を拾っておく。
第3章「植物の意識を探る」での三輪敬之氏の発言は示唆と刺激に富む。

「場」は自身の内部に立ち現れてくる、情感を伴った空間で、対象化された物理的な空間ではありません。僕たちは、「今、ここ」において即興的に会話をしていますが、それが成立するためには、舞台が共有される必要があります。この舞台が「場」に相当します。[以下、清水博の「即興劇モデル」による「場」の説明が続く。]「場」は実体でなくて、働きなのです。(71-72頁)


「場」の研究に関連して、僕が今取り組んでいるのは、空間的に離れた場所間において、空間的な「間」、すなわち間合いを取り合って人々がコミュニケーションをすることができるシステムの設計です。
 互いが「間」を取り合うためには、互いの異なる「場」が共通の一つの「場」へと統合される必要があります。そして、その統合された「場」に互いの存在を位置づけることになるわけですね。これにより間合いが生成すると考えられます。この間合いがうまく作られないと、タイミングが合った共同作業が困難になります。つまり、時間的な間の生成に先行して空間的な間が生成するものと考えられます。(73頁)

本書の底流にある「遍在する知性」というアイデアは、ベルクソンめいていてなかなかナイス。
そのベルクソンについては、第11章「意識を科学する」の冒頭で話題になり、第13章「量子コンピュータで意識の問題は解決する」にも一度その名が出てくる。

天外 ホログラムは三次元の情報を復元するよね。しかもそのフィルムの一部だけを取ってきても、全体を復元できるという特性がある。脳はまさに量子ホログラム復元装置かもしれない。そうすると、僕らのまわりにあるゼロ・ポイント・フィールドは巨大な記憶装置だというんだ。
瀬名 それこそ「遍在する記憶」ということになる。ベルクソンの「純粋記憶」が、量子論脳科学で蘇ってくるような感じですね!(257-258頁)

最後にもう一つ。「Aha!体験」は「抽象化能力」(人間の脳=能力の特徴の一つ)の最たるものだという天外伺朗の説は面白い(253頁)。