2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

月と蛙

W杯がはじまるともういけない。 毎晩やっていることといえば、食事の用意・後かたづけとサッカー観戦だけ(入浴もする)。 新聞はW杯関連記事を再読・三読・未読し、サッカー関連の雑誌を繰り返し眺めている。 本など悠長に読んでいる暇がない。というか、…

職人技と抽象力

中世の職人歌合に、学者と芸者が並べて描かれているのを宗教学を学ぶ甥に見せて、網野善彦がこう語った。 「ほうら、学者も芸者みたいに、正確にものごとを認識したり、表現したりできないとだめなんだぞ。芸者は正確に芸ができなくっちゃあいけない。天皇だ…

悪という力

昨日書いたこととの関連で、網野善彦著『日本中世に何が起きたか』(1997年)をとりあげる。 巻末の「あとがきにかえて 宗教と経済活動の関係」で網野氏は、かつて『無縁・公界・楽』(1978年)の「まえがき」に書いたことを述懐されている。 高校教師をして…

ファスト風土は現代の無縁の空間である

三浦展編著の『脱ファスト風土宣言』を読みながら、「ファスト風土」は現代の「無縁」(網野善彦)の空間ではないかということを考えている。 それは、柄谷行人の『世界共和国へ』を読んでいて、官僚制組織こそが、いいかえれば「個人として責任をとらない『…

三浦語録

三浦展氏の「「街育」のすすめ」(『脱ファスト風土宣言』序章)から、ぐっときたフレーズをもう少し拾っておく。 ほとんど各頁から一つ、だらしない抜き書きになる。この人の「思想」は、どこか深いところへ届いている。 ◎「…流動性と匿名性は都市だけの特…

「「街育」のすすめ」

三浦展編著の『脱ファスト風土宣言──商店街を救え!』を継続的に読んでいる。 私の神戸の居宅の近所で「ガーデンシティ舞多聞」というプロジェクトが進んでいる。 面白そうなので、「老後の住まい」の候補に資料を取り寄せてみた。 この事業にかかわっている…

『東京タワー』と『杯』

◎リリー・フランキー『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(扶桑社) 《人の一生のうちでただ一度だけ起こること》 だれでも一生に一冊、小説が書けるという。笑いや涙、感動や共感を誘う小説。誘わなくとも、読者の心の奥深いところ、情動にはたら…

ヒッチコック語録──『記憶と生』(第3回・補遺)

昨日書いたことの補遺。 ベルクソンが「持続の本性」をめぐって、次のように書いていた。 原稿書きに熱中して、ふと気がつくと五つ目の鐘が鳴っていた。 この状況に対して注意深い自問を加えてみると、たしかにすでに鳴った四つの鐘の音は私(ベルクソン)の…

『記憶と生』(第3回)

あいかわらず「持続の本姓」に収録された五節分の文章の周辺をうろついている。 前田英樹さんが「訳者まえがき」に、「ひとつの節ごとを、節と節との繋がりを、ごくゆっくりと読んでもらいたい。そうすれば、ドゥルーズの考案したタイトルの総体が、いかに驚…

「私的言語」に関する覚え書き(補遺)

昨日書いた「のおもいつき」のネタを二つ、後日の噴飯(最後の噴飯)の日のために記録しておく。 その1は、柄谷行人著『世界共和国へ』の「普遍宗教」をあつかった箇所に出てくる。 ここで、私が考えたいのは、宗教史や宗教社会学において語られてきた問題…

「私的言語」に関する覚え書き

昨日書いたことの補足。 入不二基義さんの『ウィトゲンシュタイン』で、第三章の私的言語をめぐる議論についていけなかったことについて。 要するに、「私的言語」とは何かが腑に落ちていないのだと思う。 『哲学探究』をちゃんと読めば判るのかもしれない。…