三浦語録

三浦展氏の「「街育」のすすめ」(『脱ファスト風土宣言』序章)から、ぐっときたフレーズをもう少し拾っておく。
ほとんど各頁から一つ、だらしない抜き書きになる。この人の「思想」は、どこか深いところへ届いている。


◎「…流動性と匿名性は都市だけの特徴ではない。道路網の整備によって、日本中のどんな田舎でも流動的で匿名的な空間になったのだ。」(19頁)


◎「…ファスト風土では悪所が偏在化する。」(20頁)


◎「ファスト風土化」(大規模量販店の進出による郊外農村部の急激な変容)は人々の人間観や倫理観にまで影響を与える。「それを具体的にいえば、「人間も大量生産される物であるという感覚」である。」(21頁)


◎大型ショッピングセンターに陳列された物(商品)には顔が見えない。そこでは「人だけでなく、物自体もまた匿名」である(22頁)。


◎「…東京の魅力というのは、物の豊かさだけではない。いろいろな人がいて、多様な生き方があり、本当のプロがいる。そこでいろいろな人と出会い、より広い視野を持ったり、個人の多様な可能性を感じたり、自分でもその可能性を試そうという気持ちになったりするという点が東京のような都市の魅力であり、存在価値であると私は考える。」(23頁)


◎「ファスト風土は、閉じた空間である。」(24頁)


◎「ショッピングモールが一見都市に似て、都市と違うのは、この没社会性[他者との出会いと会話の欠如]にある。」(24頁)


◎「…非効率で無駄の多いコミュニケーションこそが人間社会の基本ではないのか。」(26頁)


◎「現代においては、個人が自らのアイデンティティを確立しようとするとき、地域社会に規定されたいとは誰も思わない。他方、地域社会自体が弱体化しているので、個人のアイデンティティを規定する力を持っていない。/では、どうなるのか? そのとき若者は、一気に国家にすがる可能性があると私は考える。」(27頁)


◎「ファスト風土以外の(以前の)風土や街が、選択肢として存在し続けなければならない」(28頁)。


◎「…社会を具現化したものが街なのだ。」(29頁)


◎「…街がなくなるということは、そうした連関[物をつくる人がいて、運ぶ人がいて、売る人がいて、買う人がいる…]が見えなくなるということである。それは社会がなくなるということなのである!/それは、ひいては、そこで育つ子どもが社会の存在に気づく機会が失われるということであり、最終的には、子どもの社会化が阻害されるということであろう。」(30頁)


◎「街育[まちいく]」とは、「「悪所」も内包した本来の街」をつくるということである(30頁)。


◎「子どもが社会を学ぶ場所という観点に立てば、逆に街に何が必要かもよく見えてくる。」(31頁)