岸井成格さんの講演

東京であったセミナーに参加して、毎日新聞社特別編集員の岸井成格さんの講演を聴いた。演題は「政局大激動」。
あまりにもタイミングのいい企画で、いつになくギャラリーは多い。
地殻変動とも形容すべき自民党の圧勝をもたらした「小泉旋風」とは何だったのか? ポスト総選挙の政局の動向は?
この二つのテーマで質疑応答を含め約2時間。最前列で聴いた。


小泉自民党の勝因は第一が郵政民営化の争点化に成功したこと(分かりやすい争点の設定)、第二に首相が直接国民の意思を問うたこと。
殺されてもいい、国民の意見を聴きたい。
首相にここまで言われて国民は応えないわけにはいかなかった。
その背景に「制度の特質」がある。この言葉が今回の講演のキーワード。
制度とは小選挙区制度のこと。その特質は巨大政党に有利な選挙制度であること。
したがって二大政党制を導きやすいこと。
その帰結が政権選択であり、総理の選出である。つまり事実上の首相公選制。
今回の選挙は、政治改革十年余にしてこの小選挙区制度の特質がいかんなく発揮された。
ということは、次の総選挙で民主党に風が吹くこともありうるわけだ。
これ支えた最大の要素が「無党派層」の存在。小泉純一郎はそれを「宝の山」と呼んだ。
従来の支持母体を切って、都市周辺のサラリーマン夫婦をターゲットにする。
これをまともにやったのが変人・小泉だった。
自民党が選挙で負ける3つの条件(投票率のアップ、分裂選挙、シングル・イッシュー)が全部そろったにもかかわらず大勝するという、これまでの常識をくつがえす結果が生まれた理由である。
それともう一つ。
小選挙区制下の政党政治は中央主導であるべき。
反対派の公認剥奪も「くノ一」刺客(この言葉の生みの親は岸井さんだった)も政党政治ならば当然のことで、変人はその当然のことをやっただけ。
小泉は女性的である、だからあれほど非情になれたという見方もある。
今後の政治日程。
権力闘争は決着がついた。野中が完璧にやられ、亀井も死に体。小泉の一人勝ちである。
ポスト小泉の動向については慎重にならざるを得ない。
なにしろ変人、何をやるかまったく想定できない。
11月15日の紀宮成婚後、突然辞任して靖国に参拝するかもしれない。そうなると福田の線も出てくる。
無難なところで麻生、谷垣。安部は次の次か。
いずれにせよ次の組閣が注目される。幹事長、財務相、外相あたりがポイント。
来年の通常国会以降、社会保障制度全体の見直しとこれに連動する消費税問題が争点化されることを考えると厚労相も重要になる。安部厚労相の線もありうる。


と、メモを書き写したが、これではあの臨場感を再現できない。
肉声、肉顔のいかに情報量に富んでいることか。
それに、死んだふり解散(中曽根)やハプニング解散(大平)や細川政権誕生前後の政治改革の動向など、そう言われるとつい昨日のことのように思い出すここ二十年ほどの現代政治史に関することがらを一切省いてしまった。
これでは表面的に流れる。
政治は人である。政治は歴史である。これはただそう書いただけのこと。