和歌における思想的構造の意味論的研究・承前


 引き続き、若松英輔氏の文章から。


《井筒豊子は俊彦の妻でもあるが、独立した一個の思索者である。小説集、複数の訳書もある。しかし、彼女の業績のなかで最も注目するべきは和歌における「思想的構造の意味論的研究」である。
 成果は「言語フィールドとしての和歌」、「意識フィルールドとしての和歌」(雑誌「文学」岩波書店)そして「自然曼荼羅」(岩波講座 東洋思想『日本思想』岩波書店)の3部作に見ることができる。私たちはそこに井筒俊彦が畏怖と深甚な感動を覚え、蠱惑的と感じた世界へ単独で進んでいった一人の女性を発見するのである。
 井筒俊彦がこれらの論考を評価していたことを書いておきたい。井筒豊子については、改めて別稿で論じることになるだろう。》


 井筒豊子をめぐる別稿は、見あたらないが、若松氏の著書『井筒俊彦 叡知の哲学』の第六章「言葉とコトバ」に「和歌の意味論」の項があり、その254頁以下でわずかながら言及されている。
 いま手元に、井筒豊子の三部作がそろっている。若松氏の著書とあわせて読むことで、私なりの、和歌(古今、新古今)における思想的構造の意味論的研究に取り組みたい。


◎井筒豊子「言語フィールドとしての和歌」(岩波書店『文学』52巻1号、1984年1月)
◎井筒豊子「意識フィールドとしての和歌」(岩波書店『文学』52巻12号、1984年12月)
◎井筒豊子「自然曼荼羅」(『岩波講座東洋思想16 日本思想2』1989年3月)