Web評論誌『コーラ』27号のご案内
■■■Web評論誌『コーラ』27号のご案内(転載歓迎)■■■
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●新連載<前近代を再発掘する>第3回●
回帰する『太平記』あるいは歴史と暴力
岡田有生・広坂朋信
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なぜ『太平記』か(広坂朋信)
『太平記』を読んでみようと思い立ったのは、なにも岩波文庫版の刊行が始
まったからというだけではない。これまで花田清輝が『近代の超克』などで提
唱した「前近代的なものを否定的媒介にして、近代的なものをこえようとす
る」アイデアをめぐって議論してきた。日本の前近代は古代から幕末までの長
い歴史があるが、生活や文化の面で現代とある程度までの連続性のある時代は
室町時代からだとされている。例えば山崎正和は、生け花、茶の湯、連歌、水
墨画、能、狂言、床の間、座敷、醤油、砂糖、饅頭、納豆、豆腐を列挙して、
室町時代が「少なくとも日本文化の伝統の半ば近くを創造した」としている
(山崎正和『室町記』講談社文庫)。「伝統の半ば近く」というところが肝要
であって、もしこれが「伝統のすべて」であれば、それは現代にあまりにも近
すぎて「否定的媒介」とはならない。江戸時代、それも化政期以降の都市文化
を取り上げると、現代にも通じるところがたやすく見つかるためにパースペク
ティブを見誤ることになりかねないのはそのためだ。逆に、平安時代の王朝文
化はあまりに浮世離れしているように見える。その点、室町時代は現代に通じ
るものがありながら違うところは違うので「否定的媒介」として取り上げるに
はなかなか適任だろう。(以下、Webに続く)
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●連載:哥とクオリア/ペルソナと哥●
第36章 像と喩の彼岸─和歌のメカニスム5
第37章 続・像と喩の彼岸─和歌のメカニスム5
中原紀生
http://homepage1.canvas.ne.jp/sogets-syobo/uta-36.html
http://homepage1.canvas.ne.jp/sogets-syobo/uta-37.html
■言語芸術論の構図をめぐる試行的考察(Ver.2)
前章の末尾に、吉本隆明の芸術言語原論(言語の理論)を、X・Y・Zの
三本の座標軸に関係づけて概観したラフ・スケッチを掲げました。それは製作
者自身、得心がいっているわけではない難点だらけの、荒削りな試作品でしか
ないものでした。その後、像と喩にもとづく表現の理論と三基軸との関係につ
いてあれこれ考えをめぐらせ、そこに、吉本表現論における第三の要素(であ
り、かつ、韻律・撰択・転換・喩につづく第五の表現段階)であるところの
「パラ・イメージ」の概念をどう位置づけたものかと思い悩み、そのあげく、
(あいかわらず、意味や価値といった言語の属性をうまく拾いあげることがで
きていませんが)、第二の試作品をこしらえてみたので、その概略(という
か、骨格と若干の素材)を以下に記しておきます。(以下、Webに続く)
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●連載「新・玩物草紙」●
長田 弘の詩は/御伽草紙
寺田 操
http://homepage1.canvas.ne.jp/sogets-syobo/singanbutusousi-17.html
五月十日、夜のNHKニュースで長田 弘の訃報。本棚から『記憶のつくり
方』(朝日文庫/2012・3・30)を取り出して開いてみた。「鳥」「最
初の友人」が印象に残っている。自分の思想や哲学を特定の領域だけで伝達・
自足するのではなく、広範囲の読者へレベルを下げずに発信できる詩人であっ
た。「肩車」冒頭から。
《肩車が好きだった。父によくせがんだ。背をむけて、/父が屈みこむ。わた
しは父の頭に手をしっかりのせて、/両脚を肩に掛ける。気をつけなければな
らないのは立ち/あがるとき。わずかに父の両肩のバランスが崩れる。そ/の
バランスの崩れをうまくしのがねばならない。立ちあ/がってしまえば、あと
は大丈夫だ。わたしはもう誰より/も高いところにいる。わたしは巨人だ。
ちっちゃな巨人/だ。わたしの見ているものはほかの誰にも見えないもの/
だ。父さえ見ることのできないものだ。》 (以下、Webに続く)