『出生の秘密』

三浦雅士『出生の秘密』を買った。
パースとラカンのことが書かれた「六 記号の階梯」と「七 鏡のなかの私」をざっと流し読んだ。
アッと驚くことが書かれているようには見えなかったので妙に安心した。
「あとがき」をじっくり読んだ。異様に高揚した文章だった。
「一 出生の秘密」の冒頭、丸谷才一『樹影譚』の内容紹介を少し気を入れて読んだ。
上手い。いかにもプロの書き方。
こういう読ませる文章、商業的な文章はいったん術中にはまるともう一気に読み切るしかないと思った。
内容があろうがなかろうが読ませられてしまう。それはそれでとても愉しいことだ。
(と思っていた。ところが、そこから先が一向に面白くならない。
妙にドライブ感に欠ける。ここから「あとがき」のあの高揚感までの道は長い。以上、後日談)。
ジュリアン・ジェインズ『神々の沈黙──意識の誕生と文明の興亡』読了。
ちょうど四か月かけて読んだ。
最初の頃の興奮はしだいに薄れていったけれど、一字一句おろそかにせずに、それでいて自由気儘に(連想、空想、妄想の類の跳梁を楽しみながら)読み続けた。