初借り

 昨年の暮れ、マンションを衝動買いして、バタバタと引越した。家のすぐ前の公園の一角に県立図書館と市立図書館が並んでいて、新刊旧刊古本絶版本全集本等々とりまぜて、手にとって眺めてみたいと思うほどの本はまあ大体のところが揃っている。それが衝動買いと突然の転居のほぼ唯一といっていい理由で、今日やっとその本懐を遂げることができた。
 昼過ぎまで雑用をこなしたあと、近所の珈琲館でお茶して、公園をのんびり散歩して、図書館をはしごして、数ヶ月ぶりに本の貸し出しを受けた。国文学系三冊、ベルクソン系二冊、伝記系一冊(思想家や文学者、芸術家の評伝をいつかまとめ読みしたいと常々思っていて、ラカンとかウィトゲンシュタインとかバタイユとか、いくつかあたりをつけている)、昨年出た本で気になっていたもの二冊、計八冊を借りてきた。
 一冊一冊、丁寧に味わい、なにか書き残しておくだけの時間はないが、手で重みを確かめたり、装丁を鑑賞したり、まえがきやあとがきを読んだり、ぱらぱら眺めて摘み読みをしたり、本の読み方はいろいろある。リストにしておくだけのことでも、それは一つの方法だと思う。


加藤周一『『日本文学史序説』補講』(かもがわ出版:2006.11)
丸谷才一後鳥羽院 第二版』(筑摩書房:2004.9)
高橋睦郎十二夜──闇と罪の王朝文学史』(集英社:2003.11)
◎久米博他編『ベルクソン読本』(法政大学出版局:2006.4)
◎中村弓子『受肉詩学──ベルクソンクローデルジード』(みすず書房:1995.12)
エドワード・リード『伝記 ジェームズ・ギブソン──知覚理論の革命』(佐々木正人監訳,勁草書房:2006.11)
ハンナ・アーレント『思索日記Ⅱ 1953-1973』(青木隆嘉訳,法政大学出版局:2006.5)
丸谷才一鹿島茂三浦雅士『文学全集を立ちあげる』(文藝春秋:2006.9)