今年最初に読んだ本・買った本

 今年の初読みは、安田登著『あわいの力──「心の時代」の次を生きる』。


 昨年の暮れ、毎日新聞渡辺保の書評文で知った前田英樹と安田登の対話本『からだで作る〈芸〉の思想』と一緒に購入した。
 今日、全十章のうち二章まで読んだ。滅法面白い。
 面白く読みやすいからといって読み急いではいけない。言葉が身体に染み入るのを感じとりながら、ゆっくりじっくり読み進めなければいけない本だと思う。


 版元のミシマ社の本は、内田樹著『街場の文体論』を読んだことがある。装丁、紙質、活字、その他の仕様がとても気に入り、中身もよかったので内田本としては『他者と身体』『死と身体』『レヴィナスと愛の現象学』『映画の精神分析』に次ぐ常備本となった。
 『あわいの力』はその『街場の文体論』の姉妹編のような造りの本で、書店の棚に『からだで作る〈芸〉の思想』と並べられているのを手にとったときの感触で名著だと直観した。
 安田本は『疲れない体をつくる「和」の身体作法』に次いで二冊目で、これも常備本になっている。


 今までのところで特に面白かったのは、「ワキとはすなわち「媒介」である」の論と「こころ/おもひ/心(しん)」という日本的な心(こころ)の三層構造の説。
 「いまは昔」の現象や「終止しようとしない日本語の特徴」をめぐる議論も刺激的だった。
 いずれも、いまとりくんでいる古典和歌における「心」の問題に直結している。


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 今年の初買いは、新潮文庫の『小林秀雄対話集──直観を磨くもの』。


 講談社文芸文庫版の「対話集」が中断したままだが、新潮文庫版の装丁(カバー写真)、活字の組み方が気に入ったので先に読むことにした。(結局また積読になるかもしれない。)
 十二人の対談者のうち福田恆存大岡昇平永井龍男河上徹太郎の四人が文芸文庫とかぶっている。
 その河上徹太郎との「歴史について」は、音源が「小林秀雄最後の日々」を特集した『考える人』(2013年春号)の付録CDで公開されていた。
「対談」より「対話」がこの人の話芸に相応しい。できればすべて耳で読みたい。


 小林秀雄柳田國男の関係が気になっている。
 講演「信ずることと知ること」で、ベルクソン柳田國男(『故郷七十年』と『山の人生』と『遠野物語』)の話を聴いて以来のこと。そういえば文芸文庫版の対話集も、相前後して同じ文庫から刊行された『柳田國男文芸論集』と一緒に買った。
 昨年暮れ偶然『柳田国男論』(柄谷行人)と『小林秀雄の哲学』(高橋昌一郎)を並行して読みいろいろ触発されたが、記録していないので思い出せない。残念なことをした。
 だから今年は、できるかぎり書き残すことにした。