詩はレトリックと音楽との同時的表現による快楽である

 この言葉は、毎日新聞の今年最初の「今週の本棚」で、第6回毎日書評賞を受けた『鶴見俊輔書評集成 全3巻』について書かれた丸谷才一さんの文章に出てくる。
 書評の名手はたくさんいるが、一冊の本として見ると、途中で退屈する。その点、鶴見さんの書評集は、何か心にゴソリと来るものがあって、その摩擦感、抵抗感がすばらしい。もちろん不満もある。「日本の批評家にしては珍しく好んで詩を扱い、よく引用するけれど、その詩はおおむね政治的モットーや人生訓に類するものであって、詩がレトリックと音楽との同時的表現による快楽であるという局面は関心の埒外にあるようだ。」
 詩はレトリックと音楽との同時的表現による快楽である。昨年来、紀貫之のこと、古今和歌集のことに思いを巡らせるなかで、おぼろげに掴みかけた古今集的表現の実質をズバリと言い切った言葉として、心にゴソリと来た。
 以上、このブログを書くことを止めてしまったわけではないので、その気になった時に何か書いておこうと思って書いてみた。