睦月影郎

仕事と官能小説漬けの一日だった。
先だって読んだ藍川京の『炎』は源氏物語を下敷きに、序章の「紅の闇」から最終章の「灰色の別離」まで章名に十一の色彩を鏤めた香り高い名品だった。
でもこの人の作品はなぜだか続けて読む気になれない。
で、またまた睦月影郎の新作を買って、半日仕事にかりだされた貴重な休日の残りの時間を費やして読んだ。
読んだのは『禁戯 かがり淫法帖』。シリーズ第四弾。
この人の嗜好は性に関する禁圧がくっきりと明瞭にさだまっている社会を描いてこそ際立つ。
秘帖・秘図シリーズやこの淫法帖シリーズもよかったけれど、個人的な好みとしては「明治官能シリーズ」が新鮮。
鹿島茂さんが「週刊プレイボーイ」での対談で「睦月さんは日本のトリュフォーだね」と発言している(鹿島茂対話集『オン・セックス』に収録)。
対談を終えて、「偽物の変態が世にのさばる中で、語の最も正しい意味での変態、折り紙つきの変態である。しかも、その変態の強度が、谷崎に匹敵するほどの、他に類を見ないものなので、小説のポルノ度もまた高い」と評している。
「語の最も正しい意味での変態」とは?