『はじめて読むニーチェ』ほか

湯山光俊『はじめて読むニーチェ』読了。
この本はやはり第二章が格段に素晴らしい。
ニーチェの思想を紹介するこの章は三部からなる。
湯山さんはそこで、ニーチェが発見・発明した三つの概念(アポロンディオニュソス永遠回帰力への意志)と二つの心理学(ニヒリズムルサンチマン)と四つの文体=方法(詩・アフォリズム・キャラクター・系譜)を、ニーチェの生理と生涯とその著作に、そしてデリダドゥルーズアドルノなどに関連づけて解説している。
わけても第三部の文体篇が画期的に素晴らしい。
この本のハイライトをなすと同時に、その叙述のいたるところに湯山さんの独創がちりばめられている。
未来の文体であり音楽の精神を体現したリートである「詩」。
未来に書かれるあらゆる書物の書き出しでありあらゆる始まりとしての永遠回帰そのものである「アフォリズム」。
身振りや声を備えた生でありニーチェの悩める身体そのものである「キャラクター」(概念的人物)。
そして歴史のうちに無数の中断(離接点)や不連続(分岐点)を見出す複眼的な遠近法でありそこで生成される価値を生存の法則としての力への意志として変換していく「系譜」。
このニーチェの文体をめぐる四つの論考を本書構成の中軸に据えて、その生涯と著作、概念と心理学をこれにそくして配列し直し、さらにニーチェ自身の文章をふんだんに引用・抜粋し、そこに湯山さんの解読と飛躍を重ね書きしていけば、もっともっと素晴らしい本になったことだろう。


     ※
昨日、マゾッホの『魂を漁る女』第一部を読み終えた。面白い。
この作品はゆっくりと時間をかけて頭と躰に言葉と情景と人物を染み入らせながら読み込んでいきたい。
神崎京介女薫の旅 禁の園へ』を買った。結局、買った。
シリーズ第12作で、スタート時に中学三年生だった山神大地はまだ高校二年生。
「先生、入ります」(74頁)には笑った。
「気持いいって、すごく複雑だ。快感がハーモニーを織りなしている」(140頁)は深い。
夜、友人から勧められた『僕の彼女を紹介します』を観た。これはよかった。