核家族と郊外化

核家族と郊外化
これからの住まいや都市のあり方をめぐる「対談」に際して、いくつかの本を読み返した。
なかでも三浦展著『ファスト風土化する日本──郊外化とその病理』は、何度読んでも新鮮で切れ味の鋭い論考だった。
「第二次大戦は傑出した都市と夢のモデルを創造した。核家族と郊外だ」。
これは本書(202頁)で紹介されているニューアーバニズムの騎手の一人、都市計画家ピーター・カルソープ(『次代のアメリカ大都市圏』)の言葉。
考えてみれば、現在の都市問題、社会問題の根っこのところにこれら二つの「アメリカンドリーム」の残骸がある。
郊外には、物はあるが「リアルな生活」はない。
そこにあるのは「地域固有の歴史や風土、生活と無縁の無色透明の消費社会」(=消費と娯楽のパラダイス)であり、「記憶喪失のファスト風土」だけである(206頁)。
「重要なのは、街に「働く」という行為を戻すことだ」と著者は言う。
「街の中に仕事があるということは、多様な人間を街の中で見るということであり、その人間同士の関係の仕方、コミュニケーションの仕方を知らず知らずのうちに肌で感じるということである。異なる者同士が、仕事を通じてかかわり合い、言葉を交わし、利害を調整し、仕事を進める。それこそがコミュニティがあるということなのだ。別に芝生の公園があることが公共空間なのではない」(210頁)。
「学校も街の中にあった方がよい。郊外の住宅地の、用途地域指定された区域に高い金網で囲われた学校なんて、まるで牢獄だ。隣が八百屋と銭湯だというくらいのほうがいいのだ。そうすれば毎日が総合的学習、体験学習である」(212頁)。
その他、退職住民によるNPO・シニア会社の設立とフリーター対策を組み合わせたオールドニュータウン問題への処方箋「社会問題解決団地」の政策提案など、改めて感動する。
核家族」に由来する問題群への処方箋は、街に仕事と学校を取り戻すこと。
「郊外化」に由来する問題群への処方箋は、人間的魅力を備えた都市、つまり「歩く」ことを前提にした都市をつくること。