最近買った本──『幽玄・あはれ・さび』ほか

 久しぶりの大人買い(というほどの冊数でもないか)。
 和歌と連歌俳諧、能・人形浄瑠璃・歌舞伎、茶の湯を起点に花、書、香、そして美術建築工芸へと、日本の美学に関連する書物を集中的に読みたいと思っている。ここ数年ずっと思いつづけている。


◎大西克礼『幽玄・あはれ・さび』(大西克礼美学コレクション1,書肆心水
吉本隆明源実朝』(ちくま文庫
保田與重郎後鳥羽院(増補新版)』(保田與重郎文庫4,新学社)
◎安田登『異界を旅する能 ワキという存在』(ちくま文庫


 昨年読んだ田中久文著『日本美を哲学する』がとても面白かった。
 「大西の説く「あはれ」・「幽玄」・「さび」についての議論を、西田幾多郎唐木順三井筒俊彦らを援用しながら追いかけ」(第一部)、また「大西の議論を中心におき、柳宗悦久松真一らを援用しながら、日本と西洋との「芸術」に関する見方の根本的な相違点を明らかにする」(第二部)と「はじめに」にある。


「哲学的にいうならば、「あはれ」はこの世界の本質をどう把握するかという問題であり、「幽玄」とはこの世界をどう超越するかという問題であり、「さび」とは離脱した世界をどう再び回復するかという問題である。…「いき」の場合には、自己と他者との関係のなかで「美」が問題となっている。」


 田中本をぱらぱらと眺め返してみて、やはり大西克礼の原著にあたらなければならぬと思った。「コレクション1」は『幽玄とあはれ』と『風雅論──「さび」の研究』を収める。


「…「あはれ」「幽玄」「さび」「いき」といった概念をめぐって展開された思索は、今日的にいえば芸術論・文学論・芸能論・演劇論などといわれる形をとりながらも、実際には人間や世界のあり方全体に関わるものであり、しかも、何ものを前提とせずに[特定の経典や教義による制約を受けずに素手で]世界を考えようとする、まさに「哲学」的なものであったといっても過言ではない。」


 この個所を読んで坂部恵の著書と佐々木健一著『日本的感性』を想起した。大西本とあわせて熟読玩味したい。


 電子ブックを試してみようと思いたち、あまり深く考えずに小浜逸郎著『日本の七大思想家』を選んで読んだ。
 吉本隆明の章で印象に残ったのが『源実朝』(1971年刊行)に対する高評価。なにをどう評価しているかは読み返してみてもよくわからないが、『初期歌謡論』(1977年刊行)に先立つ吉本和歌論をおさえておきたいと思った。


 安田本は、いま読んでいる『からだで作る〈芸〉の思想──武術と能の対話』で前田英樹がしきりに保田與重郎に言及しているので前々からいちど読んでおきたかった後鳥羽院論を手元におくことにした。
 対談相手の安田登が『芭蕉』を読んだと語っているのでこれもあわせて購入しておけばよかった。
 その安田登の本は『あわいの力──「心の時代」の次を生きる』でふれられていた「順行する時間」と「遡行する時間」の融合の話を読みたくて前々から目をつけていた。