2006-01-01から1年間の記事一覧

宗教・経済・科学・芸術(続)

同時進行的に複数の本を併読していると、いろいろと面白い発見や過去の読書体験の蘇りなどがあって飽きない。 昨日書いたことと関連して、気になっていることがあるので書いておく。 最近、柄谷行人『世界共和国へ──資本=ネーション=国家を超えて』(岩波…

宗教・経済・科学・芸術

中沢新一さんの『芸術人類学』を断続的に読んでいる。 3月に出た本だから、もうかれこれ二月あまり、ためつすがめつ眺めている。 同じみすず書房から翌月刊行された『レヴィ=ストロース『神話論理』の森へ』に、『芸術人類学』にも納められた「『神話論理…

『記憶と生』(第1回)

以前、「日常座臥、ベルクソンの文章に浸っていたいと思うようになった」と書いた。 「まるで、恋をしているような気分」とも。 「ベルクソンの文章に接しているときだけ、心と躰のもやもやが晴れて、澄み切った気持ちになれる」とも。 あれからほぼ二ヶ月。…

紙一重

文庫本で吉本隆明の著書を二冊、同時に読み進めている。 『カール・マルクス』(光文社文庫)と『最後の親鸞』(ちくま学芸文庫)。 なんど読み返しても、咀嚼しきれない濃厚な残余が後を引く。 思想家としての吉本隆明の凄さがようやく判りかけてきた。そん…

単身赴任先で読む本(続)

あれからほぼ一月。新しい生活のスタイルはまだ確立できていないけれども、ようやくネット環境が整ったので、ぼちぼち読書日記を再開しようと思い立った。 今日のところはリハビリを兼ねて、この間に買い求めた本をリストアップしておく。 ・高田明和『〈ハ…

単身赴任先で読む本

今朝の「天声人語」で、無人島で読む本、独房で読む本の話題がとりあげられていた。 孤島や獄舎でなく、自宅や通勤電車内でもなく、単身赴任先で読む本の選択に困っている。 私事ながら、といってもこのブログで書いているのは私事ばかりなのだが、この4月…

最近読んでいる本・買った本

あいかわらずの不調、不運が続いている。 ホームに上がると、電車の扉がしまる。横断歩道では、信号が赤に変わる。街を歩いていると、人にぶつかる。たばこの火が服に落ちる。 知人の名前が出てこない。本の題名を忘れる。数字が憶えられない。 読みかけの本…

『物質と記憶』(第24回)

巻末の「概要と結論」を最初から通読して、これで『物質と記憶』全編を読了した。 ほぼ8ヶ月かかって、とりあえず所期の目的(判ろうが判るまいが、とにかく一度は最後まで読む)を果たしたわけだが、あまり達成感がない。 ベルクソンの思索が身心のすみず…

最近読んだ本・買った本

ここ1週間ほど、風邪と花粉症の症状に日替わりで悩まされ、やる気と根気が枯れはてて、集中力が続かない。 脳力と記憶力が減衰して、はては社会性まで薄れていく。 この状態をこじらせると、春先の軽い鬱につながっていく。 もっとこじらせると、もっとやっ…

ライプニッツおそるべし!

昨日の話題の続き。 『空間の謎・時間の謎』第Ⅱ章では、時空の関係説(ライプニッツ)と絶対空間・絶対時間の理論(ニュートン)との対決が、後知恵をもって白黒をつける単純な裁定ではなく、それぞれが依って立つ科学観にまで遡って腑分けされている。 議論…

脳が喜ぶ時空の問題

内井惣七著『空間の謎・時間の謎』が、俄然面白くなってきた。 いま、第Ⅰ章「空間とは? 時間とは?」と第Ⅱ章「ライプニッツとニュートンは何を争ったか」を読み終えて、ようやく第Ⅲ章「ニュートンのバケツから相対性理論まで」に入ったところ。 以下、第Ⅳ章…

『はじめての〈超ひも理論〉』

川合光著『はじめての〈超ひも理論〉──宇宙・力・時間の謎を解く』(講談社現代新書)を読んでいる。 内井惣七著『空間の謎・時間の謎』の同時併読本として買ったもの。 スーパーストリングの話は昔から好きだった。 物質の究極とか、宇宙の起源や成り立ちと…

『プロセス・アイ』

茂木健一郎著『プロセス・アイ』を読了したのは、もう一月近く前のことになる。 読後の印象を一言でくくると、「静かな火星年代記」。 レイ・ブラッドベリの同名の名作SFは、たしか26の連作短編で編まれたオムニバス形式のもので、各編の登場人物も時代も…

最近買った本──『RATIO』

たぶん読まないだろうな、と思いながら『RATIO[ラチオ]』(1号)を買った。 講談社初の思想誌なのだそうだ。 巻頭論考「今、われわれの根本問題をどう考えるか、どう考えうるか」では小泉義之(「自爆する子の前で哲学は可能か──あるいは、デリダの…

『物質と記憶』(第23回・補遺)

とうとう、アンリ・ベルクソン/ジル・ドゥルーズ編『記憶と生』(前田英樹訳)を買った。 『物質と記憶』の副読本として、ドゥルーズの『ベルクソンの哲学』(宇波彰訳)を常備し、折にふれて部分読みや流し読みをしている。 でも、ドゥルーズの文章は「雰…

『物質と記憶』(第23回)

『物質と記憶』独り読書会を再開した。 前回、「一から出直し」と書いた。 今日、三週間ぶりにようやく本を開き、とりあえず「概要と結論」の後半に目を通そうとしたけれど、まるで集中力が働かず、早々に断念。 しばらく「リハビリ」が必要かもしれない。 …

最近買った本──『〈心〉はからだの外にある』

今日もまた、読んだ本ではなくて買った本の話題。 河野哲也著『〈心〉はからだの外にある──「エコロジカルな私」の哲学』(NHKブックス)の序章「心理主義の罠」と第一章「環境と共にある〈私〉──ギブソンの知覚論から」とあとがき「心理学と探偵小説」を…

最近買った本──『日本人は思想したか』

近頃は買った本の話ばかりで、読み終えた本の感想、書評もどきの文章がまるで書けない。 そもそもまともに読めないのだから、どうしようもない。 とっかえひっかえ本を手にして活字を眺めてはいるのだが、まるで頭に入ってこない。心に染みこまない。 一月近…

「小林秀雄の霊が降りてきた」

昨日の話題の続き。というか、種明かし。 文藝春秋の3月号に、茂木健一郎氏の「小林秀雄の霊が降りてきた」という文章が掲載されている。 「科学者の私が恐山のイタコに心動かされたわけ」と副題が添えられていて、なかなか面白いエッセイだった。 小笠原ミ…

歴史とクオリア

いま目の前でミュージカルを観ている時の、たとえば群舞するダンサーたちの筋肉の躍動や皮膚ににじんだ汗や迸るかけ声のなまなましい「印象」と、後になってからそれを想起している時に頭に浮かんでいる、あるいは蘇っているもどかしくも朧気な「印象」とは…

「ヒボコ」

先週の土曜(18日)の晩、西宮にある県立芸術文化センターの大ホールでミュージカルを観た。 日本ミュージカル研究会主宰の高井良純氏が作・作曲・演出した「ヒボコ 天日槍物語−水と炎と愛の伝説−」。 この作品は、以前も別の劇場で観たことがある。 木の香…

『空間の謎・時間の謎』

このことは昨日も触れたけれど、いま、内井惣七著『空間の謎・時間の謎──宇宙の始まりに迫る物理学と哲学』(中公新書)を読んでいる。 「ライプニッツ恐るべし」という意味不明のキャッチコピーに惹かれて、いつ読むというあてもないのに衝動で購入した。 …

「今週の本棚」

今週もまた『物質と記憶』はお休み。 昼前に駅前の貧相なカフェで不味い珈琲を啜りながら、読みかけの書物の頁を繰っては、思いのままに思索(というほどのものではない)をめぐらせる。 滾々とわきでてくるアイデア(というほどのものでもない)をノートに…

『黄金の華』

先日、日帰りで東京にでかけ、行き帰りの新幹線の中で、忙中閑の時間がとれた。 その日は神戸空港開港の日でもあり、一番機に乗る手もあったのだが、往復6時間弱の車中の読書時間の魅力が勝った。 鞄には「厳選」した本を二冊しのばせておいた。 トマス・ネ…

『国家の品格』

クロソフスキーや『贋金づくり』をめぐる濃厚な「気分」が続いたあとに書くのは少し気が引けるが、最近、藤原正彦著『国家の品格』(新潮新書)を読んだ。 こういう本は、ふだん滅多に読まないし、ましてや買わない。 「こういう本」というのは、まさに『国…

『貨幣とは何だろうか』からの抜き書き

昨日の続きで、今度は今村仁司著『貨幣とは何だろうか』(ちくま新書)からの自己引用。 ◎経済小説と貨幣小説 今村仁司氏は『貨幣とは何だろうか』で経済小説と貨幣小説を区別している。経済小説とは──たとえばバルザックやゾラの作品にしばしば商人や産業家…

『贋金つくり』からの抜き書き

昨日、クロソフスキーのことを書いていて、ジッドの『贋金つくり』にいきついた。 この本は以前読んだことがあって、結構面白かった。 昔書いた文章、というか編集したもので取り上げたことがある。 そこで抜き書きしたアンドレ・ジイド『贋金つくり』(川口…

『古代ローマの女たち』

ピエール・クロソフスキーの『古代ローマの女たち──ある種の行動の祭祀的にして神話的な起源』(千葉文夫訳,平凡社ライブラリー)を買った。 この本は以前、哲学書房版の『ローマの貴婦人』で読んだことがあるはずだが、ほとんど憶えていない。 どうせ、い…

『仏教vs.倫理』

末木文美士著『仏教vs.倫理』(ちくま新書)を買った。 先月、同じ著者の『日本仏教史──思想史としてのアプローチ』(新潮文庫)を「発見」した。 さっそく買い求め、日々の日課のようにして読んでいるが、乾いた砂に水が染み入るようには知識が頭に吸収され…

『太陽の黙示録』

『物質と記憶』の独り読書会はお休み。 あいかわらず「激務」が続いている。 昨晩はとうとう半徹で、朝方までお持ち帰りの仕事に没頭していた。 キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」とグレン・グールドの「ゴールドベルク変奏曲」をそれぞれ2回ずつ…